2016年8月29日月曜日

私が注視するローカルアベノミクスの「地域運営組織」

2012年に発足した安倍政権の経済、財政、金融に重点を置いた成長戦略はアベノミクスと呼ばれ今日に至っています。
今年の(2016年)6月に閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」では、目指す社会像を「女性も男性も、お年寄りも若者も、一度失敗を経験した方も、障害や難病のある方も、家庭で、職場で、地域で、あらゆる場で、誰もが活躍できる、いわば全員参加型の社会」としています。
この言葉の意味をどう施策にはめ込み、地域地域の実情と照らしあわせ将来の地域の姿を読み解くかがポイントでしょう。

少子高齢の課題解決を第一義として、まず子育て環境の是正が挙げられます。30歳の未婚率が4割と言われる若者の結婚離れの解決策として、婚活支援を始めとして、子どもを産んだ後、幼保育時の家族を含めたケア、小1ギャップの子育てや教育環境の不安解消、中学〜高校の学習環境など、切れ目なく不安材料を潰していっているように受け取れます。
非正規雇用の待遇改善、36協定(労働基準法の労働時間に係る項目)の見直し等により、女性が働きやすい環境整備も目につくところです。
LGBT、障害者、高齢者に対する取り組み、介護に関する待遇改善、などなどあらゆる人に社会参加を促し当事者意識を持って課題解決に理解を深め、国全体を良い方向に持っていこうとする施策と思われますが、一点に絞れば「次代の若者への期待」ではなかろうかと思います。

さて問題の、私たちの地域に目を向けてみます。
昨年(2015年)6月、ローカルアベノミクスの実現に向けた閣議決定が公表されました。
いわゆる地方創生における戦略テーマの一つです。
アベノミクスの主軸は経済戦略で、言うならば効率や費用対効果を重視するマーケティング的な行動です。ところが企業のマーケティングは(極端な事を言えば)投資先を選べる株主のための利益追求の産物ですから、それとごっちゃにしてしまったら大変なことになるので注意が必要です。
まちづくりを効率で考えた場合、人口が減少すれば住民を都市部に集約させ、周辺地域についてはなるべくコストのかからないような保全態勢で望めばいい、となりますがこれは上手く行かないことは周知の通りです。国単位で考えれば、首都圏への一極集中はリスクが大き過ぎるため、そこで効果的な地方分散が求められます。
地方においてコンパクトシティが成功したかと思える地域の事例もありますが、そこはあまりにそれぞれの地域の実情に差があるため、我が町も右に習ってとはなり得ません。
結論的には、「自分の住む地域は自分の手で」究極これしかありません。
気づいていなければ気づかなければならないし、必要な支援があるならば明確にその根拠を持っていなければなりません。人材が不足しているならその事実も認知すべきです。
その上で実行が伴わなければ何の意味もありません。
消滅都市という言葉がありますが、消えていく地域を私たちは目の当たりにしています。それは消しちゃならないのではなく、消えるべく退化したと考えるほうが妥当ではないでしょうか。住民を含めて、社会が必要性を選択したという理解です。

ローカルアベノミクスの細目に「小さな拠点の形成」というのがあります。持続可能な地域運営とでもいいますか。
非常に解りやすい地域残しの手法であるし、実施している地区も沢山あるため事例も盛り沢山です。但し前にも書いた通り地域の実情は2つと同じものがありませんので、参考にしても当てはめて真似をすることだけはしてはならない。行政が関与する場合、その行政運営のセンスが求められるところではないでしょうか。・・というより、そもそも地域の個別の問題に行政に手放し状態で解決を求めても無駄足でしょう。

小さな拠点と並んで「地域運営組織」というものがあります。「2020年 までに小さな拠点を全国で1,000箇所、地域運営組織を全国で3,000団体形成する。」というKPI(目標指数)が示されている、れっきとした国の施策です。
この地域運営組織というものをしっかりと踏まえて、噛み砕いて消化して、目指していくのがこれからの核となる地域(と言っても集落の集合体レベル)の生き継ぎ方なのかなと、私は考えているところです。

具体的な資料を紹介します。
総務省の自治行政局による、地域運営組織に関する報告書の抜粋ですが、まちづくりで最も重要とされている人(人材)の活用についてです。

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(4) 地域内の人材確保・育成と地域外の人材の活用
①地域内における事務局スタッフの確保・育成
地域づくりにおいて最も重要なものは「人と人とのつながり」であるため、地域運営組織の事務局においては、「地域のつなぎ役」としての専従スタッフの常駐が重要である。
地域住民相互の支え合いを礎として、地域の課題解決に向けた様々な取組(活動)を行う地域運営組織のスタッフには、社会生活に不可欠な基礎知識はもちろん、組織運営の知識や会計・事業マネジメントの知識、助成金申請をはじめとする行政事務の知識など、幅広い知識(能力)が求められている。
しかしながら、これらの知識(能力)を一人で合わせ持つようなカリスマ的なリーダーを見出すことは困難であり、また、仮にそうした人材(リーダー)を見出すことができたとしても、地域運営組織の運営が個人の能力に依存してしまうと、例えばリーダーが不在になるような事態が生じた場合に活動の継続が危ぶまれることになる等、地域住民が互いに支え合う組織として好ましくない面もあると考えられる。
この点については、「地域住民間でできることを分担して担当する」との観点から、リーダーをはじめとするスタッフが役割分担(業務分担)を行うことにより、組織運営上の負担やリスクを適切に分散させることが考えられる。この場合、事務局内において全体の事業を把握し、組織内外との連携・交渉等を行うスタッフについては、常駐・専従の職員として配置しつつ、その他のスタッフについては、事業の規模や組織の財政事情、地域住民間の役割分担等の実態を総合的に勘案のうえ、適宜、地域の状況と必要性に応じて配置することが望ましい。
また、こうした知識(能力)の取得のために、地域運営組織のスタッフが他の地域を訪問し、先進的な取組等を視察することや、中間支援組織等が実施する研修会を受講することも重要と考えられる。

②地域内における人材の確保
地域内において、地域運営組織の活動や運営に必要な人材(スタッフ)を確保するにあたっては、地域住民が地域の課題を自らの問題として考える「当事者意識」の共有が重要であり、こうした「当事者意識」を生み出すために欠かせないのが、地域で暮らし続けたいという意味や価値観、地域への「愛着」と「誇り」である。このような思いを醸成するためには、地域の魅力を「知ること」「高めること」「保ち続けること」が重要であることは言うまでもないが、加えて、地域内の一部の人材に依存することがないよう、地域運営組織の活動に関する地域内の役割分担においては、当番制やローテーション制、段階を踏んだ役職への就任等を通じて、限られた貴重な人材を地域内で循環させることも重要と考えられる。

●この資料に興味のあるかたは、以下から全文がダウンロードできます。
暮らしを支える地域運営組織に関する調査研究事業報告書(H28版)
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さて、これらも鵜呑みにはせず、地域の実情事情を見極めて欲しいと思います。
私自身もきっとこれについては、違ったニュアンスの表現をするはずです。