2019年12月9日月曜日

「棚卸し」という便利だけど誤用しそうな言葉

一般に棚卸しとは、商品の在庫管理のことだ。
ドラッグストアなどである次期になると、商品個々のプライスカードの所に、小さな付箋に数字が書かれて貼られているのを目にする。昔バイトでやったなぁ。と思い出す。
棚卸しの目的は、仕入れ後の販売や処分などと在庫の相違のチェックといわれる。

最近では「業務」「事業」に対する使い方も認知されてきている。
この場合の目的は、単にデータベース化してインデクスをつけることではない。
行う者は、調査後のデータを分析して、効率化やムダの削減にあたるとしていることが多いのではないか。

棚卸しには正確性も大事だが、効率化やムダの削減ということであるなら、真っ先に、「目的(何のために)」、「目標(いつまでに、どこまで、どういった成果物 など)」が明確化されているかどうかがポイントである。
あたりまえだが、より論理的な仮設を立て、なおかつ精査してから始めないと、過剰な時間や経費を費やすことになり効果は期待できない。仮に統計を目的とした場合でも、目標設定と評価を適切に、かつ適正に保守できる仕組みをビルトインしておくべきだ。


一方、業務の棚卸しの場合、範囲をどこまでを対象にするかが、成功の”コツ”ではないか。そこで、業務というと堅いので、「しごと」とする。
「Aさんがやっているしごとを棚卸ししましょう」とした場合、本業や趣味、家の仕事 や、仕事というにはもっとあいまいな「朝起きたら居間のエアコンのスイッチを入れる」とかいう習慣まで、含めるケースもあっていい。
反論承知であえて言っているのだが、個人においてはプライベートなごく些細な動きや環境の変化すら、これからのしごとには関わってくる。収益の伴うもの伴わないもので線引することがかえって混乱を招くことが多いためで、私だけがそうだ、とは思わない。

組織についても同じ。組織は複数の人と業務と、多様なステークホルダーを整理しておく必要があり、対象を設定する場合には、全ての中からピックアップしていくことになる。しかも高速に。高速である必要は、個別がそれぞれの案件を同時並行的にスクラップとビルドを繰り返すからで、ここでは説明を省かせていただくが、例えば働き方改革で兼業が習慣化し、テレワークによりマルチタスクで生活していく、という事例等でお察しいただきたい。


ここでは、なぜ今それか、という話をしたい。
シェアリングという言葉が使われだしている。昔は共有にあたる、のでいいのかな。
一つのものの利用者が増えれば、コストが下がる。あるいは、もののヴァリューが増えるという考えだ。
物や事は情報技術を介して、急激にそのシェアリングの成果が向上している。
最近は、物質は人であったり、事はより能動的な知として、非常にフレキシブルに機能している。

このようにして、物や事の使われ方の選択が膨大になり、かつ場所や時間といったハードルが低くなってきた昨今。いつ誰が何をどうして、という順序立てた常識みたいなものにブレイクスルーが起きていると考えて間違いはない。
私は、数年して振り返った時に、ああ2019年〜2020年がそういう次期だったね。となると確信している。
ということで、もし「今までこうだったから」という文脈をもっているなら、「今まではこうだったけど」に変えなくてはならないし、その意味であらゆる事にこれまでのロジックは捨てるべきである。選択は自由と断っておくが。


棚卸しといって、あたかもこれからを考えようとしているように見えて、アリバイであったり、イノベーションへの逃げに使われたとしたら、そんな詐欺行為には警戒が必要だ。
自分に対しても、他者に対しても。

学ぶべきことは、
1.「棚卸し」をやるには、目的目標を明確にしてやること。決して棚卸しを目的にしない。
2.また、これを高速にやること。時間がかかるプロジェクトなら大きくステージに分け、実行から評価のスパンを最小にすること。
3.棚卸し対象の固定観念を捨てること。

棚卸しは鳥瞰に他ならない。いかにワイドに捉えられるか。
しかも、個人・組織のパフォーマンスに負荷をかけない、高速かつ再構築可能なシステムを作っていくかが課題となる。


追記)
住民アンケートは住民意識や生活実態などの棚卸しと言えないか、その場合の目的・目標設定は正しいか、事業コストや効果をどう評価するかの検証が必要。

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