2018年7月18日水曜日

マルチステークホルダー・プロセスの導入と、求められる社会教育的支援

人口減少により、これまで地方公共団体を支えてきた財政構造が崩壊し、地方の自治体運営はさらに難しくなっていきます。
地方公共団体を構成する各地域には、自主自立や共助体制の構築が急務です。
しかし、高齢化・過疎化が進んだ地域にはそれを率先してやるだけの余力がないのが現状です。

振り返ってみると、住民の自主自立の姿を冷静かつ客観的に捉え、時代の要求とともに必要な措置を講じることで、地域課題に対して弾力的な対応が行える人づくりを行ってくるべきだったのではないか。と思います。
今求められるのは、持続的に運営していける地域づくりです。

そのために必要な支援は何かを考えていきます。

行革とマルチステークホルダー・プロセス


経済的な課題を抱える基礎自治体は、より経営的な業務改善が必要になってきます。
「業務や施設の効率化や職員の定数減+アウトソーシング」「財源確保や税金徴収の健全化」といった行政改革がその役を担います。
さらに行革の特徴は民間の活用です。企業やNPO、住民組織との協働は、効率的な行政運営に欠かせないのですが、横の繋がりに乏しく、縦割り行政では一層形骸化していく傾向があり課題となっています。

行革において、行政と民間は対等だと考えます。
行政の提案に対して民間が評価をする、またその逆もあると思いますが、これを推し進めることで、官と民が一体となった施策決定がやれるはずです。

企業のマーケティング的な手法を行政が取り入れていることにも注目です。
例えば政府は、協働で課題解決にあたる合意形成の手法の、「マルチステークホルダー・プロセス」について、「施策決定や事業の開発過程における手順を多種多様な関係者によって決定づけていく」として、”新しい公共”が登場した2010年頃から推奨しています。


(内閣府 マルチステークホルダーの考え方)
http://www5.cao.go.jp/npc/sustainability/concept/index.html

↓以下は項目と解説です

マルチステークホルダーの考え方

“持続可能な発展”への道のりは、決して平坦なものではありません。
 それは、人々の価値観やライフスタイルの変革、経済構造の転換、科学的知見への理解、さらには民主主義や平等の考え方の浸透、市民社会の成熟など、社会のあらゆる側面の変革を要する、壮大なプロセスです。私たち人類の全存在が試されていると言っても過言ではありません。
 この壮大なプロセスは、決して政府の政策だけで完結するものではありません。企業や消費者、投資家、労働者、NPOなど、社会の様々な立場にある組織や個人が、プロセスに参加し、学び、協力し、それぞれの役割を果たすことが不可欠なのです。
 このような課題解決の鍵を握る組織や個人を“ステークホルダー”と呼びます。そして、多種多様なステークホルダーが対等な立場で参加し、協働して課題解決にあたる合意形成の枠組みを、“マルチステークホルダー・プロセス”と言います。
 マルチステークホルダー・プロセスは、持続可能な発展を支える新しいガバナンスのモデルとして、地域の環境政策やコミュニティ政策、企業と市民セクターの共同事業、発展途上国の開発事業や資源管理、さらには国際的な基準策定プロセスなど、様々なプロジェクトに応用できます。


1.マルチステークホルダー・プロセスの定義と特徴

マルチステークホルダー・プロセスとは、3者以上のステークホルダーが、対等な立場で参加・議論できる会議を通し、単体もしくは2者間では解決の難しい課題解決のために、合意形成などの意思疎通を図るプロセスです。

 マルチステークホルダー・プロセスの特徴
 1.信頼関係の醸成
 2.社会的な正当性
 3.全体最適の追求
 4.主体的行動の促進
 5.学習する会議


2.マルチステークホルダー・プロセスの種類

マルチステークホルダー・プロセスは、以下のように、多様な目的において活用することができます。
・利害の折衝
・情報および認識の共有(例:社会的責任に関する円卓会議)
・規範の作成
・社会的正当性の確保
・政策提言(例:市民が創る循環型社会フォーラム(名古屋市))


また、以下は、検索でヒットした、ある自治体の首長による記事ですが、市民をステークホルダー(行政サービスの利用者)と位置付け政策の理解を促しています。
本文より抜粋↓
「近年、ステークホルダーという言葉をよく聞きます。日本語に訳せば「利害関係者」ですが、意味はもっと広いものがあり、例えば、企業においては株主や投資家ばかりでなく、社内の労働組合や取引先、また広く消費者・利用者なども含まれます。このステークという言葉は、「何かの結果によって失う危険のある大事なもの」という意味だそうです。ですから、企業や行政など、ある組織が下す意思決定によって、自らの大切なものに大きな影響を受ける人々、これがステークホルダーの意味であります。本庄市にとって最も大切なステークホルダーは、もちろん8万3千市民であります。そして、同時に行政の個々の事業には事業ごとに、直接関係を持つ人たちが存在しています。例えば、保育行政であれば保育園児や保護者、そして、各保育園関係者が最も直接的なステークホルダーであり、住民自治に関することであれば、自治会長や自治会の役員などは重要なステークホルダーと言えるでしょう。」

(本庄市 最大のステークホルダーは市民)
http://www.city.honjo.lg.jp/shisei/shicho/tukiiti/past/h19nen/1375335394036.html


さて、施策決定や政策実行プロセスに変化が現れている社会で、必要とされる支援は何でしょうか。
冒頭で触れたように、人口減少の諸課題解決のために国から地方へ、自治体から地域住民へと意思決定の移譲が進んでいます。しかしながら今に至る社会教育的なケアが不十分なために、そうした役割を受け止めるだけの力が備わっていないのが多くの過疎地域の実態であると思います。

当市においては、各地の公民館が廃止され生涯学習の名のもとに、コミュニティ維持に直結する自助・共助活動に資する教育的な支援が後退してしまったと考えます。
自主性によって生まれた市民活動やNPOも高齢化や後継者不足などにより、進むべき道の模索に入っています。
「公益性を目的にした団体や地縁団体の中間支援にあたる施策の再建を。」これが市民の潜在的な願望ではないでしょうか。

こうしたことから市民は、まずは現状を分析し自覚を促すことが不可欠です。加えて、コミュニテイ内での対話や互いの理解の促進、情報収集(提供)、共助を促すためのコーディネート機能、リーダー人材の育成に積極的に最大の努力が必要だと考えます。それにより、官民が共通のテーブルで未来の地域を築いていけるのだと思います。

最後に、行政に必要な支援としてあげるなら、将来を見据えた学ぶ機会の創出と公平な提供ではないでしょうか。そのためには教育分野とまちづくり分野、包括的な行革が必要と考えます。

2018年7月16日月曜日

図書館勉強会で得た「人」という提言と、レファレンスや資料の収集について考えた

昨日は、元新潟市立新津図書館長の松原伸直氏をお招きし、市民の主催による図書館の勉強会でした。
全体を通して認識したのは、使う◯、運営する◯、ビジョンを決定する◯、図書館と市民を繋ぐ◯がカギである。ということ。

◯に入る文字はもちろん」です。

勉強の内容は丁寧で基本をしっかりと抑えた良いセミナーでした。「新たに3つの事を覚えよう」という課題が出されましたので、私が新たに勉強したものの一つを紹介します。

【レファレンス】について

(日本図書館協会「知る自由を保障するための図書館の任務に関する声明」より) 
「知る自由」を権利として有する国民に,収集した図書,視聴覚資料,その他の資料と集会室等の施設を提供することが図書館の重要な任務であるとの認識に立って 
1.図書館は資料収集の自由を有する 
2.図書館は資料提供の自由を有する 
3.図書館はすべての不当な検閲に反対する 
という三か条と,これらの自由が侵されようとするとき,団結して,あくまで自由を守るという内容のものでありました。・・・
これにより私達は、「知る事」や「表現する事」を誰にも妨げられない。ということですが、よく考えてみると素晴らしい権利保証(自由)ですね。
知る自由を保証する図書館の、代表的な機能として「レファレンスサービス」があります。
窓口に行って「◯◯◯について知りたいんだけど?」と尋ねれば、適切なアドバイスがもらえるというサービスです。 勉強会で見せていただいた資料にこのようなもの(↓下図)がありました。「浪曲の歌詞が知りたい」「じゃんけんの由来が知りたい」「わらじの作り方が知りたい」・・・ へ〜、なんでもいいんだ。という感じですよね。

そこでこれは以前から思っていたことですが、「これってググればいいんじゃないの?」ということで、上の質問に検索結果のリンクを張っておきましたのでクリックしてみてください。これで図書館の役割は一つ減りました。・・・じゃ無いんです💦

今回知ったのは、「レファレンス記録」なるものがある、ということでした。

記録には、「回答概要」や「使えた資料」「使えなかった資料」等がデータ化されて、そのものが資料となっている点に関心します。
そういえば、さきほどのわらじの作り方が知りたい」のググった結果にも、インターネットの「リファレンス協同データベース」がヒットしています。
加えて、人の想像力によって新たな提案が生まれることもイメージできました。
例えば、わらじの作り方を知りたいと尋ねているこの方って、「作ったわらじを売りたい人なのか?」「履いて旅をしたい人なのか?」「作り方を地域の子どもたちに教えたい人なのか?」
こんなイマジネーションが広げられるのも、人の力ならではではないでしょうか。
これは図書館にとって重要と言われている、人に対してかけるお金の本質を考えるきっかけとなりそうです。

図書館においても、人は人工知能とどう関わるのか?

シンギュラリティという言葉を耳にするようになってきました。
「技術的特異点」と訳されて、人の能力を超えた人工知能などの成果が、社会を変革していくことですが・・優れた学習機能を有するコンピュータが、私達の暮らしに組み込まれ始めていることは事実です。私はこうした機能が人の力の及べない関係性を生み出し、コンピュータと共存した暮らしによって支えられていく時代が、眼の前に来ていると思っています。
人が役に立たない図書館は論外として、人がいても活かされない場面があるのであれば、そろそろそこに焦点を絞っていく時が訪れているのではないかと思います。

近い将来、単純にググって得られないものを与えてくれる何者かが現れるのでしょうが、社会教育行政においても、AIと人との違いや共存。このあたりに興味が湧いてきた今回のセミナーでした。

ところで、レファレンスを実際に使ってみたときのこと

ググっても辿り着けず、図書館によって解決した事例を紹介したいと思います。
資料を手元においておきたい私は、図書館で根を詰める習慣があまりないのですが、先日、妙高市図書館でレファレンスを使ってありがたく思ったことがありました。

先月、レファレンスで利用した資料請求です。


インターネットで検索した論文の取り寄せです。

  • タイトル:小規模自治体の教育行政における意思決定 〜新潟県妙高市における教育委員会制度改革と地域住民の声〜
  • 代金:複写サービス 代 485円(国立国会図書館より)
学校と市民との中間支援的な課題や、学校教育における社会教育との連携に係る問題、行政全体の課題、学校教育と社会教育の統合で生涯学習の理念にそった教育行政を行うための組織論の研究の欠如といった、当市の教育の課題を第三者の目を通して確認できる貴重な資料でした。

松原氏の蔵書で見つけた一冊の本

今回のセミナー会場にずらっと並べられた本の数々。全てに目を通し、読み返した跡や付箋のついた本、こうして持ち主によって選ばれた本の収集は、ググっては出てこない資料の一つです。私も初めて見る本ばかり。

そこで目に止まったこの本。さっそくググってAmazonで購入。
  • タイトル:図書館を使い倒す! ネットではできない資料探しの「技」と「コツ」
  • 本体価格:99円(中古本のため)+257円(送料)=合計 356円
  • 支払い金額:356円 ー 326円(いろんなポイント)=合計 30円
普段の支払いをなるべくキャッシュレスに変更した結果、クレジットカードやいろんなポイントが貯まるようになり、安く購入できてしまいました。3日ほど待つと手元に届くようです。

こうしていろんな形で集まる資料をどうこなしてアウトプットしていくかも、人に係る部分ですね。
あらら、記事を書いてるうちに発送済みの通知が届いてしまいました。