図書館、博物館等、公民館等、公文書館は、社会教育法の中で社会教育施設として挙げられている。近年、人口減少の課題等により施設の作り方が多様化してきていることから、これらの施設を教育委員会部局か、あるいは市長部局のどちらで管理するかについての議論がある。
具体的には、公設のミュージアム(博物館、美術館等)や図書館が、教育施設としての基本機能を持ちつつ、観光やまちづくりにどれほどのウエイトを置くか、ということである。
例えば当市では、関山神社宝蔵院の修復に取り掛かっているが、文化遺産の保護の一面と、一方で住民も参画しながら、周辺の文化財を含めた一体的な活用に加え、ストーリー仕立てによって魅力を創出し交流人口の拡大を図る。という保存と活用のダブルの狙いがある。妙高市歴史文化基本構想では地域活性化にも触れている。こうした取扱いは、教育とまちづくりの境界をどう振り分け、だれが主体となるかがポイントとなる。(参考:経産省の 地域ストーリー作り研究会とりまとめ)
こうしたことからも自治体は、包括的なまちづくりにこれらの教育施設をどのように機能させていくか、ということについて、それぞれのまちのビジョンというか、一貫性のある政策を持つべきだ。そのためにも、基本となる市民一人ひとりの思いを育み、まちづくりに反映できるよう、多様な学習機会の創出や市民を巻き込んだ対話が必要なのだと痛感している。
今回の信越県境地域づくり交流会の取り組みは、まさにその機会と捉えている。
ー 12月7日 ー
当日は妙高市議会の一般質問の2日目だったが、日程が午前で終わったため、午後から開始するプログラムに頭から参加できた。
今回で7回目となる信越県境地域づくり交流会は、上越市創造行政研究所(行政)と当該実行委員会の主催による、新潟県と長野県の県境を囲む市町村の、主に観光分野の連携による、地域持ち回りのテーマシンポジウムだ。
今回は『ミュージアムと地域づくり』として、1部「まなぶ」、2部「つながる」、3部「はじまる?」+番外編の、3部+α構成。2日間のプログラムのうち、私は基調講演とトークセッションに参加した。
ー フォーラム開始 ー
開会に先立ち、信越県境地域づくり交流会についてとこれまでの振り返り、今回のテーマについて「ミュージアムは趣味やレジャーの場? 使い方がわかると、その大切さがわかる・・」、そんな主旨説明をたっぷり20分間行い、基調講演に入る。
感想をまず述べてしまうが、ミュージアムの成功とは、文化に携わるキーマンとそれを囲むカルト、それが発する魅力にぐいぐい引き寄せられるように市民が共振していく。そんな図式を見たような気がする。つまり人が主役ということだ。
ミュージアムは資料ありきではなく、自然や人が作った現象を収集し、守り、発見し、見せ続けるところに文化が生まれて行くのだと思う。
強く印象に残ったのは、足元という言葉。私は常々「全ては自分の中にある」と言い聞かせている。発見とは、外部の刺激によって自分に備わっているものに気付くことであり、まちも同じである。地域にあるものを探求しようとせず、新たな価値や魅力など生み出せるはずがない。足元を学ぶ場、資料と人が集う場、ミュージアムはやはり、まちに必要な場所なのだ。
開催地となった上越市には、博物館、美術館、水族館、科学館、そして図書館がある。そうした社会教育施設の果たす役割はどのようか。私たちはそこに何を求めていき、どう参加していったらよいのか。そこに必要なものは。そんなことを考える良い機会になった。 また今回は感動もあった。ひたむきに自分の思いに挑戦し続ける4人のパネラーの皆さん、そしてゲストのワグーラさんにも細かい配慮をし、それぞれの魅力を十二分に引き出していただいた笹本氏の尽力に感謝したい。
以下は、私的メモのため細部の間違いはお許しください。
【基調講演・ミュージアムと地域づくり】笹本正治 長野県立歴史館長、信越大学名誉教授 元信州大学
【トークセッション・ミュージアムを活かした地域づくり】
(ゲスト)キャロリン・ワグーラ国際日本文化研究センター
(モデレーター)笹本正治 コメントより
近藤洋一 野尻湖ナウマンゾウ博物館館長
高田紫帆 水野美術館学芸員
高橋由美子 十日町情報館 主査「市民と協働で取り組む被災資料整理」第一回目の大地の芸術祭立ち上げに市職員として関わる。
櫻健太郎 うみがたり 館長
具体的には、公設のミュージアム(博物館、美術館等)や図書館が、教育施設としての基本機能を持ちつつ、観光やまちづくりにどれほどのウエイトを置くか、ということである。
例えば当市では、関山神社宝蔵院の修復に取り掛かっているが、文化遺産の保護の一面と、一方で住民も参画しながら、周辺の文化財を含めた一体的な活用に加え、ストーリー仕立てによって魅力を創出し交流人口の拡大を図る。という保存と活用のダブルの狙いがある。妙高市歴史文化基本構想では地域活性化にも触れている。こうした取扱いは、教育とまちづくりの境界をどう振り分け、だれが主体となるかがポイントとなる。(参考:経産省の 地域ストーリー作り研究会とりまとめ)
こうしたことからも自治体は、包括的なまちづくりにこれらの教育施設をどのように機能させていくか、ということについて、それぞれのまちのビジョンというか、一貫性のある政策を持つべきだ。そのためにも、基本となる市民一人ひとりの思いを育み、まちづくりに反映できるよう、多様な学習機会の創出や市民を巻き込んだ対話が必要なのだと痛感している。
今回の信越県境地域づくり交流会の取り組みは、まさにその機会と捉えている。
ー 12月7日 ー
当日は妙高市議会の一般質問の2日目だったが、日程が午前で終わったため、午後から開始するプログラムに頭から参加できた。
今回で7回目となる信越県境地域づくり交流会は、上越市創造行政研究所(行政)と当該実行委員会の主催による、新潟県と長野県の県境を囲む市町村の、主に観光分野の連携による、地域持ち回りのテーマシンポジウムだ。
今回は『ミュージアムと地域づくり』として、1部「まなぶ」、2部「つながる」、3部「はじまる?」+番外編の、3部+α構成。2日間のプログラムのうち、私は基調講演とトークセッションに参加した。
ー フォーラム開始 ー
開会に先立ち、信越県境地域づくり交流会についてとこれまでの振り返り、今回のテーマについて「ミュージアムは趣味やレジャーの場? 使い方がわかると、その大切さがわかる・・」、そんな主旨説明をたっぷり20分間行い、基調講演に入る。
感想をまず述べてしまうが、ミュージアムの成功とは、文化に携わるキーマンとそれを囲むカルト、それが発する魅力にぐいぐい引き寄せられるように市民が共振していく。そんな図式を見たような気がする。つまり人が主役ということだ。
ミュージアムは資料ありきではなく、自然や人が作った現象を収集し、守り、発見し、見せ続けるところに文化が生まれて行くのだと思う。
強く印象に残ったのは、足元という言葉。私は常々「全ては自分の中にある」と言い聞かせている。発見とは、外部の刺激によって自分に備わっているものに気付くことであり、まちも同じである。地域にあるものを探求しようとせず、新たな価値や魅力など生み出せるはずがない。足元を学ぶ場、資料と人が集う場、ミュージアムはやはり、まちに必要な場所なのだ。
開催地となった上越市には、博物館、美術館、水族館、科学館、そして図書館がある。そうした社会教育施設の果たす役割はどのようか。私たちはそこに何を求めていき、どう参加していったらよいのか。そこに必要なものは。そんなことを考える良い機会になった。 また今回は感動もあった。ひたむきに自分の思いに挑戦し続ける4人のパネラーの皆さん、そしてゲストのワグーラさんにも細かい配慮をし、それぞれの魅力を十二分に引き出していただいた笹本氏の尽力に感謝したい。
以下は、私的メモのため細部の間違いはお許しください。
【基調講演・ミュージアムと地域づくり】笹本正治 長野県立歴史館長、信越大学名誉教授 元信州大学
- 博物館は、展示だけではなく、知識情報→地域づくり、交流の場所(学芸員や横のつながり)、研究の最前線(常に新しい何かを考える場)、過去、現在未来(地域づくりも同じ)、人づくりの場(どのように活動しているのか)である。
- 博物館は資料の収集、保存+展示、研究の場。博物館は学ぶ場である。そのために、資料取集をする。理解してもらうために展示する。それによって考えてもらいたいと考えている。
- 世界中から観光で呼べる博物館はどれだけあるか? 名刺としての博物館(自分たちのふるさとを語るためのもの、自己認識のために他の博物館を見る。)
- 過去の人類の歩みを確認し、未来を考える場。地域を理解させたい。地域を見せたい(地元を自慢したい、させたい)
- 学芸員の存在、「学芸員に誇り」反響 →FB投稿が新聞報道される
- 地方の博物館は 空いている・・・
- 展示が生命線(明治維新は負の遺産はなかったのか、歴史を変えていくのは有名人ばかりではない。「展示は終わりのメッセージが一番大事」)
- 小学校5、6年に対して、バックヤード見学、本物の重さ肌触り(縄文土器、縄文人骨)
- 古文書を読める人が減った。ティーンズ古文書講座、学校連携。「博物館職員が知っておきたい知的財産」若い人と交流をする。
- 企業と連携して無料デー。企業がお客(子供)をいっぱい連れてきてくれる。ケーブルテレビと連携。歴史館ふるさと講座を提供
- 長野県博物館協会。博物館にこない人へのアンケート、研修会、古文書で横に繋がろうとしている。心を一つにするためにスタッフがピンバッチをつけた(あるクマ、土器)
- 信州大滝村 イワナのなれ鮨、安曇野市豊科郷土博物館(も、お金が無い)→安曇野市文書館
- 須坂市旧小田切家住宅の復旧、世界の民族人形博物館→NHKが季節に撮りに来る→民放が撮りに来る。
- こんなにいいことだ・・我慢。結婚するときにお金のことを考えない。本当に大事なことを忘れてしまっている。信州高遠美術館(桜)。妻籠宿本陣 南木曽町
- 芸術は地域を元気にする(大地の芸術祭)。地域全体で学んでいく。「松本まるごと博物館」松本市文化芸術振興基本方針。安曇野文化振興基本方針。
- 市町村合併で地域博物館が消えていく。旧の小さなまちは、公民館と同じで地域の核となると考えたはず。博物館でもきてもらえる人がいれば 本来なら入館料をとるべきでは無いのかも。公民館や図書かnと同じ役割ではないか。合併してできた市町村は博物館を作っていない、名刺を持っていない。
- 社会教育のために、「わたしたちの信州学」。他の地域や異なる文化を・・・写真有り
- 「日常生活からひもとく信州」本の紹介。
- 国、県、市町村は目的が違う。観光博物館? わたしたちは何を目指すのか、「地域の未来のために」。お金がなければ知恵と努力で乗り切ろう。地域の博物館は住民のため。学芸員も見学者も市民。観光客のためだけではない。博物館は自己認識の場。わたしたちには仲間がいる。わたしたちは未来のために格闘する。大事な文化をどうやって守って行ったらいいか?博物館はそのための道具。
【トークセッション・ミュージアムを活かした地域づくり】
(ゲスト)キャロリン・ワグーラ国際日本文化研究センター
- しゅう仏、日本文化研究、ピッツバーグの礼拝所での事件、市内のミュージアムが 読書会などサポート、コミュニティ、町の未来を変えていく。
- コメント)地域の成長、館の成長を実感。
(モデレーター)笹本正治 コメントより
- 長野図書館、安曇野は地域ごとに図書館をつくった。小布施は外部から館長。木曽町でも図書館を作った。図書館は地域づくりの核。
- 各館思いが詰まっている。努力を見てあげる。
- どんな場所にも歴史の痕跡がある。足元に学ぶ対象があっても見過ごしてしまう。ナウマンゾウが特殊ではない。日本人の多くは足元を知らない。そういう時に、足を止めて学びましょう。と博物館へ行く。
- 淡水魚の先に、森がある。地域によって魚の食べ方が違う。食べ物の文化を支えてきたのは地域。食べ物から足元を見たことがあるのか。ヤマゴボウを使ったそば。ふのりを入れるそば。それを気づかせてくれるのも博物館、水族館。淡水魚をしっかり見ることで海の魚も見えてくる。
- 信州の芸術家をおいて素晴らしさを実感させてくれる価値。博物館は足元だが、美術館はもっと天を見ることができる。
- 図書館利用者。飯田市、年寄りに対する優しさ。
- 研究は楽しいだけではない。本を読む時間がない。博物館が楽しめるように努力している。
- 資料は劣化する。評価は変わる。
- 外国は、図書館、博物館収蔵の仕方、レベルの差。日本文化をどうやって集積していくか。
- 未来のために何をするか。こんな社会にしたのは誰か。政治家は、私達は。山村がだめになり、山が、水潤が、未来はどこにあるのが、足元集落をどうみるか、私達はどう見るか。一人ひとりではなく、社会の問題。山が荒廃して未来へ繋げるのか。世界的視野でも同じ。
近藤洋一 野尻湖ナウマンゾウ博物館館長
- 理念:野尻湖化石、遺物、氷河時代の自然と旧石器人類。地域博物館・・飯綱、黒姫、妙高
- 笹ヶ峰でもナウマンゾウは見つかっている。氷河時代
- 地域と協働するまちづくり(ナウマンゾウモニュメント、遊歩道、カヌー体験)自然を活かす(癒しの森・・森林浴、食)
- 野尻湖人・・人骨が発見されていない。夢を追い続ける
- 発掘体験は珍しい
- 一押しと苦労)発掘にきて欲しい。子どものうちから。
- 地域づくりに提供できたもの)ナウマンゾウ、地域の宝として巻き込んだ。小さな事でも地域の歴史に体験して欲しい。
- メッセージ)存在の理念が持続しないと意味がない。地域が参画すること、協働、それが地域づくりになる。持続につながる。
高田紫帆 水野美術館学芸員
- 学芸員になるため長野に。安曇野田淵行男記念館から。
- ホクト創業者、水野正幸が建物とコレクションを作った。日本画→日本庭園が魅力(一枚の絵として観れる 無料)。
- 第2展示室、床の間で観ているように畳があり、ガラスケース無し。
- 収蔵品のこだわり。橋本雅邦。天心の弟子3人→横山大観、下村観山、西郷孤月
- 菱田春草(早死)収集に最も力を入れている。この流れをくむ作家(東京藝大)
- 上村松園 美人画。中島千波(小布施出身)
- 横山大観「無我」3作、国博と足立美術館、水野美術館
- 学芸員の使命(フライヤー)年に2回、日本画にとらわれない展示をする。敷居が高い、先ずはきてもらおう(エヴァンゲリオン展)。コレクション展年間4〜5回テーマ展示を行う。鳥をテーマ、大観・春草展。
- 浮世絵刷り実演、水墨画実演。県外美術館でコレクション展。
- 大人の自由研究、絵画を別分野のかたに見てもらい、興味を深める。
- 横の繋がりを大切にする。児玉果亭のボロボロの大作の修復に挑戦。
- 一押しと苦労)特別企画展よりも、常設展、コレクションにも来て欲しい。
- 地域づくりに提供できたもの)美術自体の力。鑑賞は個人の作業。別々のものを持ち買ってもらう。足りないところは、スタッフの人数が少ない。
- メッセージ)美術館の持つ資料の特異性は、たった一人の人が作った一点物。生活の中で無くていいかもしれないものを繋いでいくことの意味。未来の人にバトンをつなぐ使命。本物を見て欲しい。
高橋由美子 十日町情報館 主査「市民と協働で取り組む被災資料整理」第一回目の大地の芸術祭立ち上げに市職員として関わる。
- 広域図書館、十日町と津南町で6万人。開館平成11年で若い。十日町市史編纂にちなんだ資料が豊富。
- 広域図書館(中核図書館)、交流の場・情報の受発信、著名な建築家の設計、中越大震災等により被災、図書館サービス業務委託・指定管理(5年指定管理の後直営に戻す)
- 図書館戦争のロケ地、地のステップ→段丘上の書架、図書館の自由に関する宣言。大地の芸術際の時は、日に40〜50人が見学に来る。
- 情報館車庫に、被災した老舗加賀屋資料(文書6万点)が運び込まれた。→被災資料の寄託・寄贈が増える。
- 市民と行政が協働で整理作業。図書館法で定められている図書館は誰でも無料で好きに使える。レファレンスで相談、生涯に渡る学び。被災した資料を後世に伝えるため。「十日町古文書整理ボランティア」地域との一体感を取り戻すきっかけになった。市民が地域の資料整理に参加する意味が大きい。関わっている市民の目の輝き、心の充実度。被災の喪失感から脱却への取り組みになったのではないか。
- 資料整理ボランティアの現状(写真)
- 行政の意識改革と市民の参画
- 一押しと苦労 )夜の図書館 コンサートや講演会をやっている。本棚を体感する。バックヤードツアーを月に2回やっている。古文書を開くこと発掘と同じ醍醐味。
- 地域づくりに提供できたもの)ほんとの出会いを支えてきた。若い図書館だから老齢人口、障害者増えている。アクセシビリティを高めて行かないといけない。上臈を得ることを諦めないで欲しい。拡大機など。100冊読むのがいいのが、1冊の素晴らしい本が良いのがの問いかけ。古文書整理参加で、ここに住み続ける理由を提供してきた。
- メッセージ)図書館は個人の理由で利用する。サイレントマジョリティーを無視してはいけない。投書箱にもある。パートナーとしてどうやっていくか。市民が図書館を動かしていく主役になっていくかもしれない、どうしたらフォローしていくかを考える。
櫻健太郎 うみがたり 館長
- 横浜八景島指定管理者、3000トン 250種展示
- 「うみがたり」=80年以上続く歴史を語り継ぐ。訪れる人々とともに新しい未来の物語をつくる水族館。
- 愛称、ロゴの意味。ミッション。3ヶ月で50万人来館
- アメリカでは愛称募集あまりしない(コメント)
- 島根県立美術館 ミシュラン 夕日が見える(笹本)
- 一押しと苦労)成長していく姿。生き物もスタッフも。
- 地域づくりに提供できたもの)淡水魚コーナーは地味だが、絶滅しそうな種がある。自分たちの街を見つめなおしてもらえるのでは。
- メッセージ)楽しいから学び。水族館は自然保護の施設だと思っているが、魅力を伝えることが大事であるから。